パンフレットや企画書を作るとき、キーワードはどのように設定しているだろうか。
上司や先輩が作った資料を社名だけ変えて持っていく。
顧客のニーズに合うはずもない。
叱咤されるならまだいいほうで、他社に決まってしまえば目も当てられない。
流行語を真似して失敗しているパターンも多い。
CMのキャッチコピー、ドラマの台詞、お笑い芸人のつかみはインパクトがある。
ついついマネしたくなる。
家族や友人との会話の中でもたくさん出てくる。
ところがビジネスシーンでは品がなくなったり、浅はかさが伝わってしまう。
誰しも最初は模倣からスタートするので悪くはないが、商品やサービスとイコールになっているかを問いかけたい。
自分でオリジナルなものを考えたい人。
商品・サービスと全く関係ないものになるということがある。
意気込むほど伝えるべき相手のことを忘れていく。
基本的に人間の思考範囲は狭く、自分の知識の範囲でしか考えられない。
視野が広い人は、身近にそういう人がいるか、トレーニングを受けた人に限られる。
それでは、どのような人が上手に伝えているのだろうか。
ビジネスシーンではプレゼンテーションスキルが必須となり、トレーニングにより全体のレベルが上がった。
皮肉なことにスキルが先行したため中身のないプレゼンが増えた。
ポイントを絞り、キーワードを使ってかっこよく決める。しかし、説得力を感じない。
たどたどしくても説得力のある人がたくさんいる。
プレゼンが上手い人も、そうではない人も共通していることは本気度。
本気の人が考え抜いた言葉だからこそ重みがあり人に伝わる。
真似しただけ、スキルを身につけただけ、これは中身がないことを簡単に見抜かれる。
選択した言葉が良ければもっと伝わる。
本気で取り組んでいれば、良いキーワードが自然に生まれてくるもの。
そのキーワードを相手の目線で評価することを忘れなければ、おのずと成果に繋がる。
実際にはキーワードをゼロから生み出すことは少ない。
市場や顧客のニーズを真摯に受け止め、最良の方法を考えた結果、その行き着く先をキーワードで示すことができたとき、適切な言葉を選択できる。
それを行うためにはいくつかの問題点を認識し、キーワードの考え方を学ぶ必要がある。
次にそれを見ていきたい。
どんなことにも共通するが、素人が素人のまま考え続けても上手くはならない。
どの分野でもプロフェッショナルがいる。
教えてもらうことが一番の近道に他ならない。
ところがプライドやコストの面など理由がいろいろあり、自分でやるしかない場合もある。
その場合、以下の問題点がある。
キーワードでも戦略でも良し悪しを問わなければ誰でも考えることができる。
9割の人が自分の考えられる範囲で考え抜いたならばそれ以上はないと思っている。
それは考えるためのスキルがあることを知らないためである。
考えるスキルを持たない集団は考えるスキルを教えられない。
スキルのない素人が素人に教える。無知が重なり、それが正しいという認識となっっていく。
そうなると定型的な表現に頼るか、少し上手くいった誰かのマネをするしかなくなる。
たまたま上手くいった誰かの型に無理矢理当てはめるから表現がちぐはぐになる。
ジレンマに陥りながらも考えるスキルがないため同じことを繰り返す。
議論をしようものなら毎回同じ論点で争い、毎回同じ回答を繰り返す。
負のスパイラルが完成されていく。
言葉というものは個人に帰属する面もあるが、組織に根付いた文化の影響のほうが大きい。
パンフレットやキャッチコピーを見比べてみるとそれがよくわかる。
その組織の意思決定や風土まで見えてくる。
いずれにしても「考えるスキル」を身につけていかなければ、自分も組織もよくならない。
ものごとの理を探す(理由を見つける)
新しい可能性を探す
出来事を想像する(過去も、未来も)
考えるためには情報が必要となる。それを支える3つの能力がある。
まず、文字、音声、画像、表情、これらを認識する力。
その認識したものを判別する力。
続いて、判別したものを整理する力。
そして、スキルとは別に社会常識、経済、歴史、文化などの教養が知識として必要となる。
また、社会情勢、為替、最新技術、国際的な動きから未来を予測する洞察力が欲しい。
知識や洞経力とスキルが融合して「考える能力」を作り出している。
積み重ねた経験も加わって成熟されていく。
ビジネスの基本と言われる5W1H。
キーワードを考えるときにこの5W1Hで考えると何故かいいものができない。
先に述べたとおり型にはまったものは想像力を阻害してしまう。
流れのなかで自然に出てくることが望ましい。
また、5W1Hで考えるデメリットはもう一つある。
全て並列になってしまい、目的と手段が同じウェイトとなる。
目的の達成が重要であることを忘れてしまう。
キーワードで書くとどのような言葉が出るか?
要素も含めてノート1ページ分に思いつくまま書き出す。
文章でも構わない。
書き出した言葉を組み合わせてもっといいものが出ないかを検討する。
シンブルなもの、覚えやすいもの、語呂がいいもの、文字面(もじづら)がいいもの、状況がイメージしやすいものを選ぶ。
キーワードはできるだけシンプルにする。
覚えやすくすることで、記憶に残る、使いたくなる効果を導く。
「省く」ことがシンプルにするコツとなる。
「私は」「あなたは」「それ」「あの」「この」など主語や指示代名詞を省くとすっきりした表現となる。
例えば「時間が短縮できるため、素早く実施できます」というキャッチコピー。
意味が重複している部分を削除し「時短効果があります」としたほうが明確となる。
「AIの利用が増えています」IT業界であれば周知の事実。説明書きには書いてもいいが重要な場面で使う必要はない。
上記と同様に誰でも知っていることは省いたほうが、一番伝えたいことに注目させることができる。
「〜なので」という理由を説明する表現を使うとくどくなる。キーワードはつかみ。詳細はキーワードでつかんだ後に説明書きで案内すれば問題ない。
長いキーワードや文章はインパクトが薄れる。単語や短い文章で印象に残すようにする。
暴力に関すること、死に関すること、血を連想すものなどは見るだけでも嫌な人がいる。基本的には使わないようする。
良くはない、悪くないなど、二重の否定は相手の思考を疎外する。
1文が長い、同じ話を何度もすると理解を疎外する。
競合がいなければどんなキーワードを用いても比較が起きない。
しかしほとんどの業界で競合は存在する。
競合他社の分析は行うが、プロモーションやキーワードは分析しない。
競合他社のキーワード分析を行うと、どのように戦えばいいかよく見える。
経営戦略を分析するよりも有用かもしれない。
競合のターゲットは?
競合の価格は?
競合の売りは?
競合のキーワードは?
競合の文化は?
マーケティングの4Pや3Cの要素がそのまま使える。
他社と同じ言葉を使わない。
他社より注目される言葉を選ぶ、作る。
同じ言葉を使うなら言葉を添えて、競合より深く届くようにする。
SDGsやDXのように新しい概念でキーワードを作るときに押さえておくべきポイントがある。
名は体を表すというように、中身を踏まえた名称というものが必要となる。
新しい概念の軸は?
新しい概念を3つの言葉で表すと?
それを使うとどんな状態になる?
その概念を使うデメリットはある?
クリーンな言葉で作られているか
語呂はいいか
覚えやすいか
名は体を表しているか
使いたくなるか
そのキーワードを聞いたターゲットはどう感じるか
世の中には常に新しいキーワードが生まれてきます。誰かが新しい価値を見つけ、届けたい思いをのせて発信していきます。単に言葉を新しくすればいいというものでもなく、価値に裏付けされたものでなければなりません。正しく価値を伝えられば世の中から正しく評価されます。最初は上手くいかなくても、何度もチャレンジすることによってキーワードも磨かれていきます。決してあきらめず考え続けていきましょう。
問い合わせを増やすプロモーションの極意を解説。
日本企業は「投資への知識」と「結論を導く力」が不足している。キーワードで直感・センスを磨き、新しい時代を乗り越える。