キーワードとは
”検索の時代を乗り越える”
そもそもキーワードとは一体何なのか?キーワードで覚える何々、今日のキーワード、キーワードのランキングなど、キーワードという言葉を日々の生活でも使っている。まず最初にキーワードの定義から考えていこう。
キーワードがつなげる検索の時代
買い物、動画、音楽、ビジネス、なんでもネットで検索する。スマートフォンが普及した今では、手のひらから世界中の情報にアクセスできる。予測変換の機能も手伝って、欲しい情報に辿り着くまでたった3フリック。検索エンジンは指定したキーワードによって大量な情報の中から、欲しい情報をピックアップしてくれる。
これはキーワードを起点に情報のネットワークが構成されていることを示している。全てのものがキーワードで繋がっているということに他ならない。ITの進化とともに、経営手法も大きく変化した。WEBマーケティングのようにキーワードを軸にした戦略構築も研究が進んでいる。同様に商品開発においてもSNSのキーワード分析や特許のキーワード分析が広がりつつあある。
ネットワークの広がりは膨大な情報をもたらした。誤った情報も多くある。その中から正確な情報を判断しなければならない。言葉からものごとの本質を見抜く力がさらに重要となっている。キーワードでものを見ることによってその力を鍛えることが可能となる。
全てのものがキーワードで繋がっている
正確な情報を判断する力が求められている
キーワードを中心に経営やビジネスを考える機会が増えている
キーワードの要素
短い言葉で1センテンスを表したもので、主に単語である。
キーワードとキャッチコピー
キーワードとよく似たものにキャッチコピーがある。キャッチコピーは広告やプロモーションで使われる。商品やサービスに関心を示してもらうために単語または短い文で表現する。キーワードはプロモーション以外にもあらゆる場面で使われる。経営ビジョン、ドメイン、スローガン、企画書など幅が広い。違いをわかりやすくするためにキーワードとキャッチコピーを定義する。
キーワードの定義
機能、性質、状態を表したもの。
単語または単語の組み合わせ。
単語自体が価値を保有している。
ものごとを調べるための手がかりの言葉。
キャッチコピーの定義
商品・サービスの広告宣伝が目的。
単語または短文。
感情や行動を導くために注目を集めようと工夫したもの。
売上や問い合わせなどにより価値が評価される。
キーワードとキャッチコピーの中間も存在する。厳密に分けられないことも多い。そこで、この研究ではキーワードの概念にキャッチコピーを含めて説明していく。
ビジネスにキーワードを使う
キーワードは広告以外にも戦略設計や文章作成に大変役立つ。複雑なものをシンプルにすることができ、思考を整理する効果がある。
キーワードが使われる場面
広告宣伝(パンフレット、DM、HP、LP)
方針、目標、ビジョン、スローガン
戦略構築(経営、事業、商品)
課題分析(問題解決)
文章作成(IR、広報、通達、社内報)
人事制度(評価項目と定義、育成)
キーワードの効果
わかりやすい、理解を早める
良い印象を与える
興味を引く
複雑なものがシンプルになる
ブランド力を上げる
キーワードの設定を失敗した場合は、マイナス効果が発生する。
すべてがマイナスに映る
品がなく見える
反対意見が噴出する(SNSの炎上)
良いキーワードとは?
文句を言うところがない
すんなり受け入れられる
意図が伝わる、良い印象を持つ
行動に繋がる(問合せ、申込、購入)
売上が継続的に上がる(一瞬ではない)
発信した情報がプラスの印象として伝わり、行動を促進するものということになる。さらに言及するならば「目的を達成できるもの」が良いキーワードということになる。
あわせて、炎上商法は是か非か考えてみたい。理想的とは言い難いものの、目的が達成できるなら選択肢としてはありなのだろう。しかし、反感が生まれるため長くは持たない。最初は新しい刺激に満足するかもしれないが、中身がないためすぐに飽きられる。ただし、バーゲンセールのようなキャンペーンはうまく使えば良い効果をもたらす。
バズることを狙った例
〇〇してみました
やってしまいました
問題のない例
今なら20%オフ!今月末まで!
良いキーワードの要素
良いキーワードはたった一言で相手に意図が伝わる。そのために必要な要素を確認する。
誰でもわかる言葉を選ぶ
プラスのイメージの言葉を選ぶ
漢字は連続3文字まで
意味の重複をさける
二重否定を使わない
誰でもわかる言葉を選ぶ
意味を理解しなければ人は動かない。相手が多ければ理解度に差がでる。思いを伝えたいときほど、誰でもわかる言葉を選ぶ必要がある。最近、SDGsやDXという言葉が出てきた。グローバル企業では問題がない。しかし、キーワードの観点で見るとNGとなる。何のことだかさっぱりわからない人が多い。伝わらなければ、取り組もうという人は少なくなる。サブタイトルや説明書きを一言添えるなど工夫が必要となる。
SDGsもDXも概念のため元々からわかりにくい。DXについてはXが2回も略されているため余計にわからない。さらに「DX◯◯」のように商品名にまでDXつけるとさらに意味が伝わらなくなるので注意してほしい。
プラスのイメージの言葉を選ぶ
プラスの言葉、ポジティブな言葉は相手が受け取りやすくなる。受け取りやすい言葉は相手の行動につながる。
うれしい
楽しい
できる
可能性 など
漢字は連続3文字まで
漢字を連続して表記する場合、3文字以内にする。4文字以上の場合は分割して読みやすくするほうがよい。読みやすさが理解度を上げ、行動を促進する。ただし、4文字の漢字でも知名度の高い言葉は問題ない。
漢字3文字以内の例
積極的
責任感
社会性
可能性
好印象 など
4文字以上の漢字を分割した例
重点項目目標 → 重要な目標
持続可能 → 持続が可能な
他者依存 → 他者に依存
分割することによって、気取ったイメージがなくなり、意味を認識しやすくなる。
4文字以上でも問題のない例
満員御礼
春夏秋冬
限定商品
集合住宅
開催日程
運営事務局
〇〇以上
〇〇以内 など
日常生活で使う言葉やことわざなどは、なじみがあるため4文字の漢字でも相手に十分伝わる。
その他に、英語のほうが知られているものは、そのまま英語のほうがよい。
中央演算処理装置
これは「CPU」で十分伝わる。
意味の重複をさける
言葉は違っていても意味が重なる場合や似ている場合がある。重複した部分を削り、すっきりとさせる。
食事を食べに行く
→ 食事に行く
約50%程度
→ 約50% or 50%程度
重複を避け、表現をすっきりさせることで相手の理解を促進される。
主語が異なる場合は重複してもかまわない。
電車が遅延したので遅れた
これは「電車が遅延したので私は遅れた」という意味のため重複しても問題ない。
二重否定を使わない
良いものを「悪くはない」、多いものを「少なくない」と表現することがある。反対の言葉を使い、否定の「ない」をつける表現方法。この二重否定は人間の思考を阻害する。脳が「あれ、どっちだっけ」というエラーを起こす。キーワードは素直に表現したほうが伝わる。
悪くはない
良くはない
多くない
少なくない
遅くない
早くない など
キーワードはシンプルで素直な表現が適している。
プロモーションにおける
理想的なキーワード
文句を言うところがない。すんなり受け入れられる。メッセージがちゃんと届く。これが良いキーワードの条件となる。プロモーションの場面ではどうだろうか。購入となると支払いが発生する。顧客は欲しいものしか購入しない。良い商品・サービスであることを前提として、その良さを正しく伝え、購入意欲に働きかけることが必要となる。そのためにも顧客の気持ちや心に届くように言葉を考える必要がある。言葉を上手に組み合わせて、相手の心に届く状態にする。これができたとき、理想的なキーワードとなる。
キーワードを作るときの条件
日本人は古来から言葉遊びが好きな民族。造語、横文字、ギャル語など、子供から大人まで言葉の表現を楽しんでいる。たった1年を振り返ってみても、新しい言葉が次々と生まれている。言葉の世界では常にイノベーションが起きている。当然、ビジネスの場面でも新しい言葉を使いたくなる。オリジナルの言葉も生み出したくなる人も多い。ここで問題となるのが、その表現が伝わるかどうかということ。新しい言葉のため説明しないと伝わらない。察しのいい相手なら伝わるかもしれないが、広く伝えることは難しい。また、ビジネスにおいてはプライベートと異なり、常識や品があることが大前提となる。プロモーションでは、この大前提を守りつつ、受けがいい表現、面白い表現が求められる。社内向けにはモチベーションや共感という要素も必要となる。
意味が伝わること
キーワードを伝えたときに、こちらのイメージが相手も想像できるかを確認する。相手の立場でものを考えると伝達度合がイメージできる。
覚えやすいこと
覚えられない言葉は相手が動かない。少しは動くかもしれないが途中でフェィドアウトする。当然、商品の場合は購買意欲が下がる。消臭剤のテレビCMや消費財に面白いネーミングをつける理由はここにある。
語呂がいいこと(拍子が良い)
リズムが良いものは口に出したくなる。その内容が面白ければ、1日中言い続けるなんてこともある。また、「あけおめ」「エンタメ」など、冒頭の言葉を繋げて略すことがある。この略した言葉も語呂がいい場合、瞬く間に広がっていく。
注意点
売れない商品をPRするときに、言い回しだけを変えて良く見せようとする。しかし、中身が同じため顧客の関心は増えない。違う使い方を提案するなど、新しい概念を盛り込む工夫が必要となる。その上で新しいキーワードを設定しなければならない。
社名や商品名は
典型的なキーワード
社名や商品名は相手に自分が何者であるか、どんな商品であるかを一言で伝えるための名称。キーワードそのものと言える。そして、3文字の名称は発音しやすい、覚えやすく、語呂がいい、心に響きやすいという強みがある。
発音しやすく覚えやすい
マッ◯、松◯、てん◯
覚えやすくて語呂が良い
味の◯、消臭◯
◯◯テクノロジー、◯◯ソリューションという横文字の表現もスマートで良いが、差別化、浸透のしやすさ、電話やメールの効率性という面でもシンプルで馴染みやすいものをお勧めする。
特殊なキーワードを使う場合
意味が伝わること、覚えやすいこと、語呂がいいことがキーワードを作る条件ではあるが、新しい概念はなじみのない言葉を使わなければいけいないときがある。必然的に意味の伝達が難しくなる。また、どうしても使いたい言葉があるなど、こだわりたいときがある。そんなときのために特殊なキーワードを使うときのテクニックを紹介する。
意味が不明なものは説明書きを添える
例
Kiwado Web キーワードで学ぶオンライン講座
略した言葉は元の言葉を併記する
例
VR バーチャル・リアリティ
読み方が難しいものはフリガナを併記する
例
鮪(まぐろ)
意味が不明なものに説明書きを添える方法は、サブタイトル、サブキャッチのような使い方となり、そのままキャッチコピーとしても使える。略した言葉は元の意味を併記すると意味が伝わる。また、人は読み方がわからないものは認識することをやめる。難しい言葉はフリガナを併記して誰にでも伝わる状態をつくることが重要となる。フリガナの代わりに画像を使うこともおすすめしたい。
言葉が潜在的に持つイメージ
言葉には相手に与える潜在的な影響力がある。表現による相手へ伝わり方を具体的に確認していく。
漢字の使い方でイメージが変わる表現
ありがとうございます(優しい)
有難うございます(固い、丁寧)
よろしくお願いします(普通)
よろしくお願いいたします(硬い、丁寧)
宜しくお願い申し上げます(古い、とても丁寧)
同じ言葉でも、平仮名、漢字の使い方によって伝わり方が変わる。
形容詞、副詞の使い方で質が変わる表現
すっごく良い(大げさ)
大変良い(上品な感じ)
同じ度合の言葉でも、形容詞、副詞の使い方によって質が変わる。
同じ意味でも表現によって品格やレベル感が変わる表現
安い(安売りのイメージ)
安価(安売りのイメージ、少し上品)
リーズナブル(もう少し上品)
お得(リーズナブルよりも親近感がある)
同じ意味でも表現のバリエーションによって、品格やレベル感を伝えることが可能となる。相手に合わせて伝わりやすい言葉を選択できる。
検索の時代においては、キーワードが中心となり、全てのものを繋げている。そのキーワードというものは、どういったものなのかを考えた。キーワードの定義に始まり、位置付け、良いキーワード、そして効果や言葉が持つイメージを確認いただけたかと思う。そして、言葉が変化するように、キーワードもまた様々な状況によって変化する。これからも私たちは新しい言葉や概念を生み出して行くことになるだろう。これからどんなキーワードが生まれてくるだろうか。とても楽しみにしている。
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