キーワードは、考え抜いて生み出すもべきもの。

 

(1)キーワード、生み出していますか?

パンフレットや企画書を作るときにテーマやキーワードをどのように設定しているでしょうか。職場では上司や先輩が作った資料を参考に少し変えて使うことも多いかと思います。そして失敗しているケースを見かけます。顧客のニーズにあわせてタイトルしか変えずに提案書を持っていき、中身が違うことを指摘されるか、他社に決めたという回答をもらっていることでしょう。

流行語を真似して失敗しているパターンもあります。CMのキャッチコピー、ドラマの台詞、お笑い芸人のつかみはインパクトがあり、ついついマネしたくなります。家族や友人との会話の中でもたくさん出てくるでしょう。ところがビジネスシーンでは品がなくなったり、浅はかさが伝わってしまい、信用を失うことがあります。

最初は誰しも模倣からスタートするので悪くはないのですが、商品やサービスとイコールになっているかを問いかけたいと思います。

そこに気がついた人は頑張って見せ方を考えるのですが、結果として商品・サービスと全く関係ないものになるという問題も発生します。意気込むほど伝えるべき相手のことを忘れていくものです。

これは、基本的に人間の思考範囲は狭く、自分の知識の範囲でしかものごとを考えられないことに起因します。視野を広げて考えることができる人は、身近にそういう人がいるか、トレーニングを受けた人に限られるでしょう。

それでは、どのような人が上手に思いを伝えているのでしょう。ビジネスシーンではプレゼンテーションスキルが必須となり、トレーニングにより全体のレベルが上がりました。そのために新しい問題も見られるようになりました。中身がないプレゼンが増えたという問題です。ポイントを絞り、キーワードを使ってかっこよく決めるのですが説得力を感じません。

言葉が上手ではなくても、思いを伝えることができる人たちがたくさんいます。たどたどしくても説得力のある人がいます。プレゼンが上手い人も、そうではない人も共通していることは本気度です。本気の人が考え抜いた言葉だからこそ重みがあり、人に伝わります。真似しただけのものやスキルを身につけただけでは伝わりません。中身がないことがよく伝わります。

自分の意思は自分の言葉で話すべきだと考えます。言葉が下手でも意思が伴うならば思いは伝わります。そして選択した言葉が良ければもっと伝わるでしょう。本気で取り組んでいれば、良いキーワードが自然に生まれてくるものです。そのキーワードを相手の目線で評価することを忘れなければ、おのずと成果に繋がるはずです。

実際にはキーワードをゼロから生み出すことは少ないでしょう。顧客のニーズを真摯に受け止め、最良の方法を考えた結果、そのいきつく先をキーワードで示すことができたとき、適切な言葉を選択できたということになります。

そして、それを行うためにはいくつかの問題点を認識し、キーワードの考え方を学ぶ必要があります。次にそれを見ていきたいと思います。

 

(2)素人は素人のまま考え続ける

どんなことにも共通していますが、素人が素人のまま考え続けても上手くはならないということです。どの分野でもプロフェッショナルがいますので、教えてもらうことが一番の近道です。ところがプライドやコストの面など理由がいろいろあり、自分でやるしかない場合もあります。その場合の問題点は以下の通りです。

 

素人が素人のまま考え続ける問題点
  • キーワードでも戦略でも良し悪しを問わなければ誰でも考えることができる。
  • 9割の人が自分の考えられる範囲で考え抜いたならばそれ以上はないと思っている。
  • それは考えるためのスキルがあることを知らないためである。
  • 考えるスキルを持たない集団は考えるスキルを教えられない。
  • スキルのない素人が素人に教える。無知が重なり、それが正しいという認識となっっていく。
  • そうなると定型的な表現に頼るか、少し上手くいった誰かのマネをするしかなくなる。
  • たまたま上手くいった誰かの型に無理矢理当てはめるから表現がちぐはぐになる。
  • ジレンマに陥りながらも考えるスキルがないため同じことを繰り返す。
  • 議論をしようものなら毎回同じ論点で争い、毎回同じ回答を繰り返す。

 

このように負のスパイラルが完成されていきます。言葉というものは個人に帰属する面もありますが、組織に根付いた文化の影響のほうが大きいように感じます。パンフレットやキャッチコピーを見比べてみるとそれがよくわかります。その組織の意思決定や風土まで見えてきます。いずれにしても「考えるスキル」を身につけていかなければ、自分も組織もよくならないということを認識する必要があります。

 

(3)考えるとは何か?

次に「考える」とは何かを見ていきたいと思います。「考える」という言葉を複数の辞書で調べると以下の3つの観点にまとめることができます。

 

考えるとは
  • ものごとの理を探す(理由を見つける)
  • 新しい可能性を探す
  • 出来事を想像する(過去も、未来も)

 

それでは、「考える」ということをスキル(能力・技能)の面から見ていきましょう。まず、認識する力が必要です。文字、音声、画像、表情、これらを理解できなければものごとを認識できません。

次に判別する力です。状態、心理、数値、背景、重要度、価値感などがあり、この判別には個人差が出ます。

続いて、情報を整理する力が必要となります。分類と結合、因果関係、フレームワーク、優先付け、価値の再構築などです。これはトレーニングによって後天的に習得することになります。

そして、スキルとは別に知識も必要です。社会常識、経済、歴史、文化などの教養が重要でしょう。

また最新の情報を収集し、社会情勢、為替、最新技術、国際イベントの動きなどから未来を予測する洞察力が欲しいところです。

このように、スキル、情報、洞察力、経験によって「考える能力」が支えられていることがわかります。考え続けることによって「考える能力」が成熟されていくのでしょう。

 

(4)考える必要性

考える必要性がゼロに向かっています。少々大げさですが、AIが出てきた今の時代、考えなくても生きていける可能性が高まったのではないでしょうか。世の中はビジネスも生活も全自動に向けて進んでいます。

では、なぜ考え続けているのでしょう。社会を良くしたい、困っている人を助けたい、誰かの役に立ちたい。そこには社会に貢献したいという強い意思があるからです。そのために試行錯誤し、実現のために考え続けています。意思がある人は考え続け、意思のない人は流され続ける傾向がより強くなるでしょう。どちらも本人の自由です。どちららがいいかはわかりません。ただ、有意義な人生を送りたいなら、強い意思を持って考え続けるべきだと思います。

 

(5)AIに勝るもの

シンギュラリティは一気に来るのではなく徐々にすり変わっていき、気がついたら全てAIがやっていたという状態になるでしょう。そのときに人間が唯一勝てるものは創造性だけです。なぜかと言うとクリエィティブなものには時間軸がないからです。AIは高速です。人間の何倍も早く大量な情報を処理して、アウトプットを提供してくれます。これにはかないません。しかし、表現に関することは納期が遅くても、いいものであれば価値があります。音楽、絵画、小説などもAIが近いうちに人間と同等のものが作れるようになります。しかし、それらは人間が作ろうとAIが作ろうと価値は変わりません。いいものはいいと評価されます。言葉もまた時間が関係ないものとして扱えます。AIを活用しながら、人間の工夫によって新しい表現の方法が多数生まれてくるのではないかと思います。

 

(6)キーワードの作り方

それでは実際にキーワードの作り方を見ていきましょう。基本は5W1Hですが、5W1Hで考えると何故かいいものができません。先ほども述べましたが型にはまったものは想像力を阻害します。流れのなかで自然に考える習慣をつけることをお勧めします。また、5W1Hで考えると全て並列になってしまい、目的と手段のウェイトが同じになってしまいます。目的の達成が重要であることを忘れないようにしましょう。

 

キーワードは流れで考える
  • 伝えたい人は誰?
  • 伝えたいことは何?
  • 伝えたい理由は?
  • どんな結果になるの?
  • ユーザーが使っている言葉は?
  • そのものについての業界の共通用語は?

 

ニーズ、ターゲット、ベネフィット、成果と同じことですが、これも5W1Hと同じく思考を疎外します。かっこのいい言葉を使うよりも、日々使っている言葉で考えるほうが思考はスムーズに進みます。

表なども用意せず、自由に考えた方が良い発想が出ます。様々な方法も試しつつ、自分が発想しやすい方法を見つけていくことが重要です。

 

それでは具体的にキーワードを作る方法を見ていきましょう。

キーワードの作り方
  • 書き出す
    一言で言うとどのような言葉が出るか?要素も含めてノート1ページ分に思いつくまま書き出します。文章でも構いません。
  • 組み合わせる
    書き出した言葉を組み合わせてもっといいものが出ないかを検討します。
  • 選ぶ
    シンブルなもの、覚えやすいもの、語呂がいいもの、文字面(もじづら)がいいもの、状況がイメージしやすいものを選びます。

 

・キーワードはシンプルに

キーワードはできるだけシンプルにします。覚えやすくすることで、記憶に残る、使いたくなる効果を導きます。シンプルにするコツは省くことです。

 

シンプルにするコツ
  • 主語・指示代名詞を省く
    「私は」「あなたは」「それ」「あの」「この」など主語や指示代名詞を省くと表現がすっきりします。
  • 重複するくだりを省く
    例えば「時間が短縮できるため、素早く実施できます」というキャッチコピーであれば、意味が重複している部分を削除し「時短効果があります」としたほうが明確になります。
  • 業界にとって当たり前のことを省く
    IT業界では「AIの利用が増えています」とわざわざ表記しなくても周知の事実です。説明書きには書いてもいいのですが、わざわざキーワードで使う必要はありません。
  • 一般的なことを省く
    上記と同様に誰でも知っていることは省いても問題がありません。
  • 理由を省略する
    理由を説明する「〜なので」という表現を使うとくどくなります。キーワードはつかみです。理由の詳細はキーワードでつかんだ後に説明書きで案内すれば問題ありません。
  • 一行以内に収める
    長いキーワードや文章はインパクトが薄れます。単語や短い文章で印象に残すようにします。

 

省くことによってシンプルになったキーワードは伝わりやすくなります。しかし、省き過ぎないほうが良い場合もありますので、これも見ていきたいと思います。主語を入れたほうが良い表現や文末まで伝えたほうが良い文章があります。迷ったときはいったん全部書き出してから、後でシンプルにするかどうか検討すると良いでしょう。
以下の例文を2つのパターンで比較して見てみましょう。

原文:明日の天気図は関東に大きく雲がかかっている。雲がかかっていると雨が降る確率が高い。よって、明日の関東地方は雨であろう。

  • シンプル化した場合
    「明日の関東地方の天気図は雲がかかっているため雨の確率が高い」
    または「明日の関東地方は雨であろう」
  • キーワード化した場合
    「明日は雨だ!」

 

・キーワードと文章、どちらで考える?

このような話をすると文章で考えるほうが得意な方は悩んでしまうかもしれません。結論としてはキーワードでも文章でもどちらでも良いと思います。自分が考えやすく、発想が多く出る方を選んでください。並行しても構いません。行ったり来たりすることも多くなります。重要なことは材料をたくさん出すことです。キーワードで考えることが苦手な人は、文章で書き出してみてから、単語に絞っていくと良いでしょう。どうしても文章で考えたい人には箇条書きをお勧めします。

参考までに私自身の方法もご案内します。

参考
  • 要素を単語で書き出す。
  • 書きながら関係のあるものを線で結ぶ。
  • 同じカテゴリーのものを大きな丸で囲む。離れていたら線で結ぶ。
  • まとまりが悪かったら別の紙に書き直すか太いペンで上書きする。
  • よくわからなくなったら次の日にする。
  • 好みの言葉であってもテーマと関係ないなら割り切って二重線で消す。
  • 頭の中をすっきりさせることを重視する。

こちらもお役に立てれば幸いです。

 

・キーワードを作る時に注意したいこと

キーワードを作る時に注意したいことがあります。キーワードを使うと、シンプルに伝えることができるメリットがあります。その良さを打ち消してしまうものがあるので確認していきましょう。

  • マイナスイメージの言葉を使わない
    暴力に関すること、死に関すること、血を連想すものなどは見るだけでも嫌な人がいます。基本的には使わないようにしましょう。
  • 二重否定を使わない
    良くはない、悪くないなど、二重の否定は相手の思考を疎外します。
  • 長い、くどい
    1文が長い、同じ話を何度もすると理解を疎外します。

 

・競合がいる場合のキーワードの作り方

ビジネスにおいては競合他社が存在します。競合がいなければどんなキーワードを用いても比較が起きないため問題ないのですがほとんどの業界で競合は存在します。経営戦略の策定でも競合他社の分析を行いますが、プロモーションやキーワードの観点ではほぼ分析していません。競合他社のキーワード分析を行うと、どのように戦えばいいか本当によく見えてきます。もしかしたら経営戦略を策定するよりも有用かもしれないと思えるぐらいです。と言っても競合分析の方法はとても普通です。通常のマーケティングの比較方法でかまいません。ただし、そこにキーワードから読み取れる競合の強みや企業風土を比較すると勝ち方がよく見えます。

 

キーワードの観点から競合を分析する
  • 競合のターゲットは?
  • 競合の価格は?
  • 競合の売りは?
  • 競合のキーワードは?
  • 競合の文化は?

マーケティングの4Pや3Cの要素となりますが、流れで考えていくと分析もスムーズになります。分析した結果から自社のキーワードを作成していきます。 勝つためのポイントは以下の通りです。

 

競合に勝つためのポイント
  • 他社と同じ言葉を使わない。
  • 他社より注目される言葉を選ぶ・作る。
  • 同じ言葉を使うなら言葉を添えて、競合より深く届くようにする。

リスティング広告を比較するだけでも価値があります。ぜひ試してみてください。

 

・新しい概念についてキーワードを作る場合

SDGsやDXのように新しい概念でキーワードを作るときに押さえておくべきポイントがあります。名は体を表すというように、中身を踏まえた名称というものが必要です。そのヒントを確認してみましょう。

 

新しい概念でキーワードを作るポイント
  • 新しい概念の軸は?
  • 新しい概念を3つの言葉で表すと?
  • それを使うとどんな状態になる?
  • その概念を使うデメリットはある?

 

これを踏まえた上で一言で表現できる言葉を考えます。間違いなく中身がともなったキーワードとなるでしょう。

 

また、新しい概念でキーワードを作るとき、2つのルートがあります。

  • 通常使う言葉で表現する
  • 新しい概念のために新しく作った言葉で表現する

この双方向から検討し、どちらが適しているか比較します。特に新しい言葉は浸透の容易さも評価すべきだと考えます。

 

(7)キーワードを評価する

作成したキーワードは適切に伝わるか確認する必要があります。以下のポイントを確認するようにしましょう。

 

キーワードを評価する
  • クリーンな言葉で作られているか
  • 語呂はいいか
  • 覚えやすいか
  • 名は体を表しているか
  • 使いたくなるか
  • そのキーワードを聞いたターゲットはどう感じるか 

 

なお、自分と相手の感想を区別するようにしてください。自分がいいと思っても相手は必ずしもそう思うとは限りません。評価は常に相手の立場で行います。

立場を変えてみることが苦手な方はマトリクス表で縦の欄に「自分」「相手」の枠を作り、○×をつけると簡単に確認ができます。

 

まとめ

世の中には常に新しいキーワードが生まれてきます。誰かが新しい価値を見つけ、届けたい思いをのせて発信していきます。単に言葉を新しくすればいいというものでもなく、価値に裏付けされたものでなければなりません。正しく価値を伝えられば世の中から正しく評価されます。最初は上手くいかなくても、何度もチャレンジすることによってキーワードも磨かれていきます。決してあきらめず考え続けていきましょう!